アイ・コンタクト
日本人は、原稿を正確に読むことに熱中し、聴衆の顔を見ない。しかし、それではメッセージは伝わらない。スピーチは、原稿を読むのではなく、聴衆に話しかけるのである。
私は、ITUの職員たちから、「原稿を用意したスピーチよりは、原稿がないアドリブのスピーチがよほど上手で、説得力がある。原稿なしにスピーチをしたらどうか」と、何度も忠告を受けた。
原稿がなければ、職員たちを見て、反応を見ながら話をする。また、原稿がないので、短い文で、同じ言葉を繰り返すことしかできない語学力の低さがプラスに作用したことも否定できないだろう。
この、聴衆の目を見て話しかけることは、説得性のあるスピーチをするために欠かせないものである。聴衆のなかの特定の人に目を向け、数秒間はじっとその人を見ながらスピーチをする。そして、次に別の人を見て、また数秒間、見つめる。この数秒間、特定の人を見る動作が、アイ・コンタクトと呼ばれ、スピーチ成功の秘訣である。
アイ・コンタクトができるようなさまざまな工夫がある。その一つは、事前に原稿の文書を、フレーズ(数語)ごとに鉛筆で区切り線を入れておく。そして、一フレーズを目で読み、頭を上げて目で読んだ一フレーズをアイ・コンタクトしながら、口に出す。そしてまた原稿を見て一フレーズを暗記するというやり方が一般的である。上手になると、一フレーズではなく、一センテンスをこのようなやり方でしゃべることができるようになる。
しかし、ノン・ネイティブの日本人にとっては、この数語ですらも、頭の中にすんなりとは入らなく、覚えて見ずにしゃべることは大変難しい。私は結局、下を向いて数フレーズ読み、そして頭を上げ、アイ・コンタクトをするという方法を行わざるを得なかった。
クリントン大統領のスピーチを身近で聞いたことがあるが、彼は、原稿を見ながら、聴衆に向かってスピーチしていた。かなり長い文章をそらんじて話すので、その場で、アドリブで話しているものと思ったが、後で配布されたスピーチ原稿を見ると、実際のスピーチの内容は正確に原稿どおりで、アドリブではなかった。
また最近は、原稿を透明のプロンプターに投影して、そのプロンプターを読むことによって、あたかもアイ・コンタクトができているように振る舞うことが、アメリカでは盛んである(オバマ大統領も使っている)。
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