会議の記録は速記者による速記録、速記録を基に整理されたminute、要点のみを書いた議事録などさまざまなレベルの記録がある。一般的には経費の節減から、記録の簡素化が行われているが、記録を会議中に確認しながら会議を進めていくというのが基本である。
多数者間会議では、多くの目撃者が居るので、事実に対する争いはそれほど起きないが、バイの会議では、記録の確認が大変重要なプロセスである。お互いの信頼に基づいた交渉を行う日本人にとっては、交渉の過程でお互いが主張したことについて文章で記録することに抵抗感があるが、これが当たり前の国際慣行だということで割り切らなければならないし、また、細心の注意を払って、誤りは訂正させなければならない。何らかの事情でminute が作成されなかったため、後に記録を書いたレターを出して確認する場合もある。また、合意の成立がなくminuteが作成できなかった場合、こちらの主張を一方的なレターで相手に送付し、立場を明確にしておく場合もある。
マルチの場合においても、合意を得られなかった案件について、こちらの主張を記録に残すよう要求することができるし、また、その案文を事務局に提出して、こちらの主張どおりの文章にさせることができる。いずれにしても国際会議においては「あうんの呼吸」などというものはなく、区切り区切りで、文書で記録を残すのが肝心である。
会議や交渉の結果合意したものをagreementと呼ぶことには誰も問題がない。しかし、 良く使われる「share」と言う言葉も合意であるにもかかわらず、日本人は、「あなたの気持ちは分かった」という 共感の意味で、合意でないように勘違いをしている向きがある。「agree」 と「share」 には、微妙なニュアンスの差があるが、まったく同じ合意を意味することを肝に銘じておかなければならない。
会議の結論を記述する方法には多くの形式がある。単に、minute を残すだけの場合も多いが、マルチの会議では、合意文書を以下に述べるような形式で特別な文章にする場合が多い。
Declaration(宣言)
Opinion (意見)
Recommendation (勧告)
Conclusion (結論)
Agreement (合意)
Resolution (決定)
Decision (決定)
Final Act (最終文書)
Final Protocol (最終議定書)
Treaty (条約)
拘束力の強いものには、「Agreement」「Resolution」「Decision」などの名称が使用される。
なお、「Final Act」や「Final Protocol」 は、国家間の条約制定会議において、Resolution などが含まれる合意された最終文書全体、あるいはその一部の呼称である。全権委任をされた代表がこの最終文書(Final Act)に署名をするが、この署名は、文書の中身が間違いないという意味であって、国家として合意したと言う意味ではない。国家として合意することは、国会等による批准の決議、更に批准書の提出等の手続きを経る必要がある。
支持 (Second)
マルチの会議では、どのような提案についても、誰かもう一人が支持発言がない場合、取り上げられない。実際は、議長は、その提案について、必ずしも支持(second)の確認を行わず、即座に取り上げる場合もあるし、また、支持の確認をしないまま無視をすることもある。しかし、支持発言がない限りは、提案無視の議長の決定に抗議することはできない。マルチの国際会議に不慣れなものは、この secondment の重要性を知らず、支持発言の根回しをしてないために、重要な案件でも無視される場合があるので、用心する必要がある。
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