国際 ビジネス必携(入門編)

    元ITU事務総局長 内海善雄
 

 

「日経プレミアシリーズ「お辞儀」と「すり足」はなぜ笑われる」 より  
 
 

(多人数)レセプション成功の秘訣

招待者リスト
 ゲストは、誰にでも分かる明快な基準によって招待されなければならない。招待が漏れたばかりに魔法使いから呪われた眠り姫の童話の例でも分かるように、招待者リストのチェックがレセプション成功の第一歩である。しかし、このことが 、日本人には大変おろそかになりがちである。それは、運命共同体の発達した日本社会では、招かれるべき人がお互いに理解できておりミスが起きにくいが、競争社会の西欧や国際社会では、誰が招かれるか、誰が招かれないか必ずしも明確ではなく、多くの者の関心事なの に、日本社会での安易な考えのままで慎重さに欠けるからである。

 スパウズ(配偶者)同伴かどうかの区別も明快でなければならない。日本人の作成した招待状の大半は、この部分に欠陥があり、招待者は、どうしたらよいのか困ることが多い。

会場の広さ
 会場の選択で重要なことは、列席者と数にマッチした会場の広さである。レセプションはいろいろな目的のために開催されるが、いずれの場合も列席者が、「盛況な集まりであった 」と感じるとそのレセプションは成功である。それは、多くの場合、会場にあふれんばかりに列席者が来た時に感じられる。列席者の数に比較して会場が広すぎる場合は、どんなにたくさんの列席者がいても 淋しく感じるものである。会場は、やや窮屈になるぐらいの人たちによって埋められる必要がある。そのためには、予想される列席者よりもやや狭い会場を選定することが秘訣である。もし、適当な会場がない場合は、パーティションで区切って狭くしてでも, 予想人数より少し狭い広さにすることが肝心である。

人の流れ
 
大人数のレセプションでは、車寄せから、クローク、リシービング・ライン、会場内の奥までの列席の人の流れがスムーズに行くことが、一番大事である。 ゲストにとって長い列で待たされることぐらい不快なことはない。私の経験では、慣れた一流ホテルのマネジャーも、ほとんどものが、この人の流れに対する配慮に欠ける。冬であれば、クロークで大行列ができ、また、リシービング・ラインで長蛇の行列、更に、飲み物のバーが、入り口近くにあるから、人々が会場の奥へ行けないというケースが通例である。

 ホテル側との打ち合わせでこちらの関心事を事前に告げると、たいていの場合、マネージャーは、「我々は、毎日レセプションをしているから心得ています。おまかせください。」 という。しかし、結果は、長蛇の列になる場合が多い。これは、マネジャーがホテル側の事情により 、適切なことを行わないからである。

 まず、クロークで列がないようにするためには、クロークの受付の数を増やさなければならないが、そのためには人員の増配置をしなければならない 。しかし、よほどのことがないとホテル側はそれをやらない。従って、ホテルとクロークの受付数を参列者の数に応じて事前にホテルに明快に要求しておかなければならない。

 次に、リシービング・ラインでの行列が予想される(200人以上を招待すると必ず起きる)場合は、シービング・ラインで挨拶をしなくても会場に入れるように 、入り口を広くして係員が誘導するのがコツである。挨拶をしたい人は、必ずリシービングラインに並ぶし、しなくても良い人はさっさと会場に入れる。

 会場内に入った人を、奥まで自然と進ませるためには、飲み物のバーを、会場の奥に配置するのが秘訣である。しかし、多くの場合、ホテル側は、逆に 、入り口近くに配置する。これは、飲み物の補給や、ウエイターのサービスが、入り口に近い方がやり易いこと、また、お客がすぐ飲み物を手にすることができるのでホテルのサービスが良いように見えることなど、ホテル側の事情がある。しかし、多人数がバーの前に集まると、人の流れが滞る。バーの位置は、必ずホテルが反対するが、一番奥に置くことが、秘訣である。そうすると人々は奥へ進み、入り口近辺に、ゲストを受け入れるスペースができる。

 レセプションの最初の数分間、ゲストが入り口付近に立ち止まり、誰もバーに進まなくて滞留ができる場合がある。そのときは、 ホスト側のものが、先に、バーへ行き、自分のための飲み物を注文をする。そうすれば、ゲストもそちらに進む。 ところが、日本人が主催するレセプションでは、ホスト側のものが、ゲストを迎え入れようと入り口付近でたむろしているケースが多い。必死でお客を迎え入れようとしている姿は、けなげであるが、もう少し自然に、振舞うべきである。お客への接待は、レセプション中に、楽しい会話でお相手することである。

スピーチ
 
多人数のレセプションでのスピーチは、よほどの有名人による名スピーチでない限り騒がしい人声の中でかき消され、誰も聞いてないことになる。しかも、そこで、通訳つきのスピーチや 、へたくそな英語のスピーチが行われると、レセプションの雰囲気が壊されることもある。スピーチをやる場合は、上手な司会者が、前場をとりもって会場を静粛な状況に持っていくこと、スピーチは、2分以内の短時間に済ませることが絶対である。

 ダンスなどの余興は、レセプションを盛り上げるのに極めて有効である。そのようなアトラクションの後に、短いスピーチをすると大変スマートになる。

料理
 
日本人が主催するレセプションは、寿司など豪華な食事が出るということが国際的な定評になっているため、食事目当てで出席する人が多い。そこで、残念ながらある程度その期待に応えざるを得ないのが実情である。もし、寿司が手配できる場合は、まず、優先してメニューの一部に入れておくべきである。しかし、日本食を何でも出せば喜ばれると言うことではない。そばやお汁類は、食べる人は皆無である。

 ゲストが、中国人だから、中国料理をだすということも、気配りもの割には喜ばれない。中国人にはとっては、外国で食べる中国料理は、本場の味ではないし、そんなものは本国でいつでも食べられるから、外国でなければ食べられないものを期待しているのである。西洋人の場合も、好奇心が旺盛であるから、外国で変な西洋料理を食べようとする人は少ない。原則は、西洋料理であれ中国料理であれ、あくまでも現地で調達できる現地の食物が一番である。

照明
 西洋では、日本と比較して照明が暗い。やや薄暗いところで、ゆっくり話をするというのが落ち着くのだろう。日本のレセプションに慣れてものには、事前打ち合わせで、照明を明くるするようホテルに要求する場合があるが、ホテル側の経験に基づく提案を素直に受け入れた方が良い。
 
 閉会の時間が来ても絶対に照明を点滅してたり、明るくしたりしないことが大事である。成功したレセプションは、時間が来てもゲストが帰らないレセプションである。決して、時間通りに終わるレセプションではない。

レセプション・コンダクター
 
レセプションは、いくら事前準備をしても、予期せぬ事が起きる。その場で判断をし、適正に対処しなければならない。ホストは、ゲストの接待をしているので、細かい配慮はできないので、レセプション全体に対する責任者を事前に決めておき、そのものが会場を見回って、細かい配慮をしなければなならない。レセプションの成功は、この責任者の経験とセンスに負うところが大である。重要な大規模のレセプションには、外国でのレセプションの経験を積んだレセプション・コンダクターが不可欠である。

 

はじめに

1 基礎的なプロトコール

挨拶

レディーズ・ファースト

敬称

序列

上位席

座席配置

レセプション

ディナー

テーブル・プラン

ビジネス・レター

レセプションで成功 の秘訣

2 プレゼンテーションの基本

スピーチ

原稿作成の秘訣

アイ・コンタクト

パワーポイントの使い方

 国際会議出席

会議の種類

議事規則の基本

会議用語


会議 成功の秘訣