国際会議の種類
「国際会議」に出席するために、外国へ出張したと聞いても、どのような職務であるのか、想像できない。それは「国際会議」と呼ばれるものが千差万別であるからであり、会議に関する日本語が発達してないため、この千差万別の集まりを、すべて「会議」と日本語では呼ばれるからである。そこで、まず、国際会議の形態を明快に理解することが、成功への第一歩である。
Bilateral meeting
Multilateral meeting
会議は、二者間会議(バイ)か、多数間会議(マルチ)かで根本的にその性格が異なる。二者間会議であれば、当事者間でそのルールを決めることができる。力関係で対等に相談して決めることが適わない場合もあろうが、基本的には当事者間で全てを決めるのが原則である。たとえ外国政府や外国企業との会議であろうが、臆することはない。相手の習慣に従うこともない。こちらの習慣を主張しても良いのである。しかし、お互いに無駄な摩擦や労力を避けるために世間一般に通用している常識 の形で交渉をするのが普通である。
外国人と二者間の会議をするときに、相手方が日本の習慣や常識と異なり面食らうことがある。時間を守らない。予定した者以外のものが現れる。合意した内容を実行しない。などなどである。詳細は後述。
多数者間会議には、3者間会議、4者間会議など、比較的少数のもの との会議と、多くのものが参加する会議とでルールが異なる。少数者間の会議は、その会議のルールを当事者で決めることが容易なので、まず会議ごとにルールを決める。しかし、当事者間で合意が成立しなければならないので、そのルールは、ほぼ他の多数者間会議で使われるものの微調整になるのが通例である。
多数者間会議は、どの会議でも、ほぼ共通に存在る議事規則に則って行われる。議事規則が明文化されている場合もあれば、名文がない場合も多いが、国際的に皆が従う共通ルールがあるので、このルールをよく理解しておく必要がある。この国際ルールは、日本国内の多数者間会議で使用される慣行と少し異なるところがあるので注意が必要である。
バイとマルチの会議の基本的な違いは、バイは、当事者が直接交渉する形態であるのに対して、マルチは、議長を介して交渉する形態をとることである。従って、マルチでは議長対策が大きなウエイトを持つ。
Meeting
Forum
Assembly
Conference
Convention
日本語で「会議」と呼ばれるものが、英語やフランス語では微妙に名称が異なる。そこで、会議の名称でその会議の性格がほぼ予想される。
Meeting
どのような会議も「meeting」には違いない。従って、日本語の「会議」に一番近い概念であるいえる。しかし、一般的には、インフォーマルな会議や打ち合わせ、少人数の会議や
、打ち合わせなど、個別の会議を「meeting」と呼んで、大きい正式な会議
は「meeting」とは呼ばない。
Forum
参加者が意見を出し合うだけで、特定の結論を期待しない会議に使われる。比較的少人数の「Forum」を「Round table」と呼ぶ場合もある。日本語で使われる「フォーラム」と同意義である。ある問題にフォーカスを当てて議論をする場合に、Seminor や Workshopと呼ぶ場合が多い。民間のビジネスマンが「国際会議に出席した」というのは、ほとんどの場合、このForumである。
よく展示会などと併設して実施される発表会的な会議が、Forumの典型である。学会と呼ばれているものも、多くはこのForumである。
主催者による開会式、少人数のキーノート・スピーチ、そして各セッションごとに分かれて、議長の下にパネルディスカッション形式によるプレゼンテーションと質疑、そして簡単な閉会式、主催者による記者発表というのが一般的なスタイルである。結論を期待しないことが原則ではあるが、誰も反対できないような声明文(Declaration)を発表して、華を飾るということも行われる。
結論を期待しない会議であるから、厳格な議事規則のようなものはない。スピーカが与えられた時間内にプレゼンテーションを終わらせなければならないのが基本であるが、多くの場合は守られず、時間が延長される。議長の腕は、時間厳守であるが、その認識も大変薄いのが現実の姿で、律儀な日本人は、聴衆としても、またパネリストとして参加してもフラストレーションに陥る。Forum成功の秘訣は別項。
大きな正式の会議が「Assembly」と呼ばれる。「Conference」と明確な区別は存在しないが、「Assembly」の場合は、比較的自由な集まりで、会議の結論も拘束的なものでない場合が多いように思う。議事は、明快な議事規則に基づいて行われる。
「Conference」よりも大きい会議を「Assembly」と呼ぶのだという人も居るが、逆に「Conference」の方が大きいという人も居る。
私の経験では、「Conference」は、広くいろいろな会議に使用されるが、「Assembly」は、国の代表が参加する会議以外にはあまり使われないように思う。
最初から参加者の間で、何らかの合意を得ることを期待している会議を「Conference」と呼ぶことが多い。しかし、各国政府間の会議も、企業間の会議も、国際会議は、広く「Conference」と
呼ばれる傾向があるので、本当に合意を得るための「Conference」なのか、それとも実質は「Forum」なのか見極める必要がある。特に民間が開催する会議で、フォーラムであるのに
もかかわらず、わざわざ「Conference」と呼び、あたかも重要な会議であるように見せかけているものもあるので用心する必要がある。
元来、条約制定会議のような大会議を「Convention」と呼び、そこで合意された条約も「Convention」と呼ばれる。しかし、民間が行う見本市のような行事を「Convention」と呼んだりもするので、ここでも用心が必要である。
Formal meeting
Informal meeting
大きな交渉ごとを行う場合に、事前の意識あわせや、調整のために多くのInformal meeitng が開催される。ここでは、議事規則を無視し、自由に意見を交換することができる。むしろこのインフォーマルな会議こそが、交渉の場であり、また、実質的な決定の場である。
正式な会議は、単なる儀式である場合も多い。正式な会議は、議事規則に従って行われるのでたとえ弱小国でも、あるいは未経験な代表も対等に扱ってもらえるが、非公式な会合では、実力勝負の世界である。そこは、顔役の世界でもあり、また多くの場合大国や、白人の世界でもある。日本人にとっては、この非公式会合で如何に力を発揮できるかが問題である。
Open meeting
Closed meeting
誰でもが参加できるのか、それとも限られたものしか参加できない会議なのかという区別である。どのような会議も、誰でもが参加できるわけがないので、すべての会議は、Closed meeting であるといえるが、ここでは、ある大会議や交渉ごとにおいて、意見調整をするために開かれる上記のinformal meeting について、誰でも参加できるのか、それともあう一定のものだけが参加できるのかというコンテクストで区別されときに良く使われる分類である。
General Assembly (総会)
Committee(委員会)
Sub-committee (少委員会)
Working group (作業部会)
Editorial committee( 文書審査委員会)
Drafting group (文案作成グループ)
大きな会議は、多くの小会議によって階層的に構成されている。第一回目の総会で、これらの小会議の構成とその議長を決定するのが通例である。原則として、会議の決定権は、総会にのみにあるので、総会以外は、どのように呼ばれようと、その機能はすべて総会に決議案を提出する作業部会である。
Regional meeting (地域会合)
Thematic meeting (分野別会合)
Preparatory meeting (準備会合)
大きな会議の意見調整のために行われる事前会合を分類してこのように呼ばれる。たとえば、WSIS(世界情報社会サミット)の第一フェーズであるジュネーブ・サミットのためには、地域準備会議が5地域、分野別会議は数テーマで、更に世界レベルの準備会議が、5回開催された。これらそれぞれの会議のために数多くの準備会合が開かれたので、トータルでは、数え切れないほどの会議が開催されたのである。
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