我々はエゴに勝てるか?

2007年10月 内海善雄

1 はじめに

飛行機は、10キロ上空の成層圏を飛ぶが、それより上には、ほとんど空気がない。地球の大地のほとんどが、砂漠、また、耕されていたり、町になっていたり、決して地球は森で覆われているわけではない。

地球を1千万分の1に縮小してみると、運動会で玉ごろがしに使う直径1m20cmの大玉くらいの大きさになり、その上に厚さ2ミリの膜を張りつけたのが大気、わずか0.16ミリの皮膜が水の層。この薄い2つの皮膜の間に、地球上のすべての生命が存在している。

2 石油と炭酸ガス

石油はどうしてできたか?

白亜紀に大気の温度が上昇、原因は火山活動により、炭酸ガス濃度が大きくなった。 北極、南極の氷はとけ、海流がなくなり、死の海となる。死骸とプランクトンが海底に堆積。それらは、酸欠状態で分解されず石油となって固定化され、炭酸ガスの濃度は、再び平常に戻り、大気の温度が平常になったとのこと。

ところが、現在の大気の炭酸ガスの濃度は、産業革命以前の平常な時代の2倍。

現在の濃度の数倍で、石油ができた時代の炭酸ガス濃度と同じになる。それは、数十年でおきるといわれている。

3 確かに、地球の温暖化は進んでいる

全長11km・厚さ400mとフランス最大の氷河であるMer de Glaceは、130年間で8.3%分に当たる約1,000m後退し、1907年以降に厚さは27%分に当たる約150m薄くなった。

太平洋の島々は、沈没中。 各地で砂漠化が進行。

先進国は、寒い地域なので、温暖化ではあまり問題はない。しかし、開発途上国は、砂漠化。世界規模の食料問題が発生する。

4 温暖化だけではなく、この小さい地球は、限界に来ているのではないか。

イースター島の巨石文化  

イースター島社会は突然崩壊した。その主な原因は人口増加に伴う大規模な森林破壊。その森林破壊は土壌の劣化と流出をもたらし、同時に、漁業に使用するカヌーの調達が不可能。この作用により、食糧不足はさらに深刻化し、枯渇する資源を巡って、争いは日増しに激しくなり、勝者は敗者を奴隷にして使役し、ついには人食いが始まった。

日本の人口  

縄文時代には約10万人〜約26万人。
弥生時代には約60万人。
奈良時代には約450万人、
平安時代(900年)には約550万人、
慶長時代(1600年)には約1,220万人。
江戸時代には、おおむね3,100万人から3,300万人台で均衡。

現在 1億2800万  食料自給率 40% (カロリーベース)

世界人口

1900年には17億人足らず。

現在、66億人を超え、2200年には100億人に達すると予測。

さあどうやって対処するのか

5 ICTと環境

ユビキタスネット社会の進展と環境に関する調査研究会報告 

      (総務省)17年3月

・ 2010年を2000年と比較してCO2の排出量は、インフラ、機器の使用増加により600万トン増加する。

・ しかし、ICTの活用による環境負荷低減効果により、1,480トンの削減。

・ さらに、ICT関連市場の拡大による産業構造の転換により1,770トン削減。

・ 結果として、ICTにより、トータル2,650万トンの削減、これは、2000年の総排出量(13億3700トン)の2%、 京都議定書の達成のための2002年排出削減目標量の15.8%に貢献。

ICTは生活の利便性の向上と環境問題とを両立させ、無意識のまま環境対策を実現。このように、技術的に今より省資源、省エネで安いものがあれば、誰でもがそちらを選ぶ。

軽油の安いヨーロッパでは、ジーゼル車が普及し、ガソリンの安いスイスでは、ガソリン車が普及  ジーゼル車が、環境に優しい。

6 環境問題は、技術開発が最大の解決策のひとつ。 経済原理でどんどん進められる。しかし、経済原理や技術開発だけでは解決できない。それは、先進国の生活レベルでない人に、そのレベルになってはだめだとは言えないからである。その結果、飛躍的なエネルギー消費が起きる。

レスターブラウン、アースポリシー研究所長の予想

もし中国経済が年8%成長を続けるならば、2031年までには1人当たりの所得が米国同じ。この時には、中国の人口 14億〜15億人。

彼らが今の米国並みに紙を使うと、現在の世界生産量の2倍が中国で消費。

中国の好調な経済発展が仮に2031年まで続いた場合、現在の全世界穀物消費量の2/3が必要になる。

米国のように4人に3台まで自動車が普及すると、中国全土では11億台が保有されることになる。現在の世界全体の保有台数は8億に過ぎない。高速道路から駐車場など自動車用のインフラのために、現在中国で米を作付けしているのと同じ面積の用地が必要。 この頃の中国での石油消費は日量9900万バレル。ただし、今日の世界の産油量は同8500万バレル。

インドでも同じ、その後ろに控えている新興国の約30億人。

このまま人類が、同じ道を進んでいくことは、物理的に不可能。

7 現在の大量消費型の経済システムは機能しないことがあきらかである。この小さい地球で人類が生き続けるためには、世界的な新たな合意の形成が必要。  

今、世界を動かしている指導原理は、それぞれが、それぞれの欲求を自由に追及して自由競争を行うことがベストであるという考え方、特に国際社会では、それがすべてある。しかし、みなの欲望を満たすことは、物理的に不可能なことになる。強力な規制が必要。そして、自由競争原理以外のguiding principle が必要。

仏教や儒教の東洋思想、互恵、譲り合い、思いやりのアジアの思想が世界を指導しなければならない世紀に入った。人類が滅びるか、生き延びられるかどうかは、西洋物質文明で賞賛された自由競争(エゴ)を捨てられるかどうかにかかっている。

「地球有限の哲理が真に理解できるか否か」「欲望に勝てるか否か」の問題である

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