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2012年01月20日

内海 善雄 国際電気通信連合(ITU)前事務総局長 経歴はこちら>>

歯車が噛み合っていない被災地の失業者と復興対策事業(1/3)


 新聞は毎朝読むものだが、しばらく経てから古いものを読んで見ると、意外と新しい発見をするものだ。年が明けてから昨年12月の新聞を改めて読み返してみたら、復興事業が、被災者の就業機会とはなっていない状況が報道されていた。
 昨年12月24日、日経新聞に「建設の人手不足 復旧事業に影」という記事があった。被災地では、土木や建築の求人に、求職者が敬遠して建設各社は必要 な人材を確保できないでいる。「人手不足を理由に公共工事の入札に参加しない建設会社も多い。宮城県が最近入札を実施した工事の2割が、応札企業が現れず に中に浮いており、復興の妨げになる恐れがある」とのこと。第3次補正予算では、がれきの処理や道路の復旧などに合計9兆円を計上した。この事業のために は述べ60万人が必要になると政府は試算している。そして「岩手、宮城、福島の被災3県で失業状態にある人は6万6000人。前年同月の2倍の高水準だ が、多くは建設業への就職を敬遠している。建設会社は地元以外で求人を増やして対応している。」とあった。
 失業者が6万人もいて、なぜ人手不足になるのだろうか。せっかくの就業機会を敬遠して被災地の失業者はどうやって生活するのかと疑問が沸く。この疑問に応えるためか、同じ紙面には、「失業保険受給者高止まり」という囲み記事があった。
 「被災地では手厚い失業保険が被災者の就労意欲をそいでいる」との指摘がある。政府や自治体には、特例措置として失業保険の給付日数を伸ばしてきたが、 「失業保険の給付をやめることで職探しに本腰を入れる人が増える」との期待がある。しかし、失業保険を受け取っていた人が生活保護の受給者になれば、「被 災自治体の財政を圧迫する」と心配している。なぜなら、「失業保険は国の支出と労使が拠出する保険料で賄う。生活保護は国と自治体が負担する仕組みで、失 業保険より給付が手厚い。」からとある。
 なるほど、失業手当が出ているから、就労する必要がない。従って、きつい建設関係の仕事が人手不足になるわけだ。しかし、雇用保険(失業保険)は、雇用 機会がなく、やむなく失業している場合に支給されるものである。現地は、入札ができないほど人手不足なのに、どうしてやむなく失業していると判定して保険 支給ができるのだろうかと、ますます疑問が沸く。その後、NHKが放送した被災地の失業問題の特集番組で、もう少し詳しく状況が分かった。

 

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