2011年11月08日
内海 善雄 | 国際電気通信連合(ITU)前事務総局長 | 経歴はこちら>> |
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利害関係が絡み合う国際社会にいると、日本人ほどマスコミや権威者の言を真に受ける国民はいないという印象を受ける。地球上の多くの人々は、まずは相手
の主張を疑って見ることがDNAに焼きつけられているように思う。それは、物事を単純に信じた者は、サバイバルできなかった厳しい現実が背景にあるのでは
なかろうか。多民族との抗争を繰り返し、勝ち残った人々で形成されているのが現在の国際社会であるが、抗争の少なかった日本人には、この遺伝子はあまり必
要がなかったに違いない。
メディアの役割の一つ、読者に多面的な見方を示すことは、何事も信じやすい日本では、特に重要であると思う。しかし、逆に単眼思考にメディアが協力して
しまうケースも見受けられる。最近の典型的な事例が、リーマンショックを受けて、一斉に経済評論家やマスコミ、そして民主党新政権が唱えた「内需拡大」で
あった。
日本は、先進国のなかでも貿易依存度の低い国である。2009年の統計では、対GDPにおける輸出依存度が、韓国43.4%、中国
24.5、 EU圏14.4%、カナダ23.4%に比較し、日本は11.4%で一番低い。このように経済活動のなかで外需の割合が低い日本であるのに、
「日本経済は、外需に依存していたからリーマンショックの波を受けた。内需を拡大して強い日本にしなければならない。これからの内需は福祉産業だ」という
極めて幼稚な経済理論がメディアを通じて、一世を風靡した。
そもそも「内需拡大」は、現代とは状況がまるで異なる四半世紀前、外貨が日本に集中して、各国の非難を浴びていた時、「前川レポート」で使われた言葉で
あった。しかし、政権交代があり、「コンクリートから人間へ」の合言葉と共に唱えられたから、メディアも新政権に対する「ご祝儀」から、あまり異を唱えな
かったのだろう。この「内需拡大」も、大震災で吹き飛んでしまい、今はほとんど聞かれない。大声で叫んでいた経済評論家は、逆の方向であると思われる
TPP加入を、今、声高に主張している。
そもそも、経済活動のグローバル化で、外需や内需と言う区分けそのものが、あまり意味がなくなっている。最近のタイの洪水による世界の生産活動への影響を見ても、国内か海外ではなく、日本を含むグローバル・マーケットで如何に生き抜くかという問題であることが分かる。
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