2011年09月20日
内海 善雄 | 国際電気通信連合(ITU)前事務総局長 | 経歴はこちら>> |
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国民は醒めている?
野田内閣が成立すると、新聞は一斉に「どじょう内閣」に好意的な記事であふれかえった。これが菅総理のなすこと全てを酷評していた同じ新聞かと思うほ
ど、記事のトーンが変わった。新内閣発足当時はハネームーンであると、わざわざ予防線を張った新聞もあるが、あまりの差に驚かされる。ところが、野田内閣
支持率は鳩山内閣や、菅内閣の発足時より低い。皆から一日も早く退陣してほしいと望まれた菅内閣の後継内閣としては、思いの外低水準だ。メディアの高揚と
は裏腹に「国民は醒めている」という見方もできそうだ。
野田新代表は、真っ先に野党党首に挨拶回りをし、三党合意は遵守すると約束、経済団体や連合へも挨拶に出向いて協力を要請した。この異例に腰の低い政治
姿勢に、国民や経済界は、好感を抱いていると報道された。 しかし、崖っぷちにたたされている日本の総理に求められる資質は、決断と実行力のあるリーダ
シップである。泥の中をチョロチョロ動き回る「どじょう」ではないと思う人も少なくないはずだが…。
小沢氏の影響力は残った?
党人事を見てみよう。野田氏は小沢氏側近の輿石氏を、党を掌握する幹事長に任命した。各紙とも、怨念を超え、「党内融和」を図る野田代表の姿勢を評価して
報道した。当の幹事長も、記者の質問に対して、野田政権を「党内融和内閣」と評した。しかし、「党内融和」とはかつて自民党が批判された「派閥均衡」の言
い換えにすぎない。しかも、選挙前に小沢氏に選挙協力を要請しなかった候補は、野田氏のみと見られていたが、なんと細川元総理の仲介で秘密裏にお願いして
いたということが判明。その後、小沢氏腹心の副幹事長人事などを見ても、「党内融和」を超えて、小沢氏の影響力が残る政権になったと言える。
党内体制では、政策調査会を復活させ、前原氏を会長に据えて、政策決定権を付与した。これは、政策決定プロセスを透明にし、有権者の要望を、議員を通じて
政策に反映する全員参加の政治だと高く評価されている。民主党が2009年の総選挙で掲げたマニフェストの各種政策はほとんど破綻した。原因は財源不足
で、マニフェストの修正は民主党内を二分してきたテーマでもある。ところが、党政調の復活は「政策決定プロセスを内閣に一元化して既得権との癒着を絶つ」
というマニフェストの理念を、財源とは関係がないのに、何の議論もなく破棄したとも解釈できる。不人気な増税や、一部に強い反対のある環太平洋パートナー
シップ協定(TPP)加入問題などは、総理の強力なリーダシップがあってはじめて処理可能な問題だ。突き放した見方をすれば、「政策立案を党政調に丸投げ
するようでは、本当にやる気があるのか疑わしい」。
“どじょう”効果もあってか、野田新内閣は国民に受け入れられる形でスタートした。直面する最大の課題は被災地の復興だが、野田首相が描く復興計画の大まかな枠組みは常識的であり、賛成できる。 復・・・>>続き
野田佳彦内閣が9月2日に発足した。内閣は13日に国会を召集、野田首相は所信表明演説を行った。 首相は、演説で、内閣が取り組むさまざまな政策課題を挙げた。短期的な危機対応として、東日本大震災か・・・>>続き
また、不適切な発言により大臣が辞任した。政策決定のスピード感が乏しい日本の政治であるが、閣僚の席の回転に関してだけは、新任の名刺の印字が乾かないほどの迅速さを発揮している。本当に困ったものだ。 ・・・>>続き