ホーム
最近の活動
正論の広場
教育啓蒙活動
国際協力
ボランティア
プロフィール
連絡方法
English
ミモザ生活文化研究所  

 

 


内海善雄  前ITU事務総局長  International Telecommunications Adviser  YOSHIO UTSUMI

 

 

著述 講演 国際人養成実践講座 インタービュー・雑誌 ジュネーブ便り 事務総局長スピーチ

 国際電気通信連合(ITU)で、8年間事務総局長をしましたが、引き続き、国連情報社会サミットで合意した情報社会の建設に微力を捧げたいと思います。

 

 

正論の広場  

「あなたはグーグルに個人情報を曝け出せますか?」

 

個人情報を統合するグーグル
 

3月から実施されたグーグルのニュー・プライバシー・ポリシー(個人情報の収集・利用についての新方針)は、まるでオーウエルの「ビッグ・ブラザー」の出現を髣髴とさせる。

グーグルは、ネットの検索サービスのほか、電子メール、交流サイトなど60以上のサービスを無料で提供している。これまでは、サービスごとに個人情報を取り扱っていた。今回、それらを一つにまとめることにしたのである。検索などのサービスがより高度になり、より便利にするというのがその理由である。

今までも、たとえば、ある特定の車に関する情報を多く検索していた利用者が、「車」と検索しただけで、グーグルはその利用者の過去の検索行動をもとに、その車のメーカのホームページを上位に示してくれた。新しい取り扱いの下では、その利用者が別サービスであるYouTubeにアクセスしても、過去の検索行動情報を参考にして、お気に入りの車の映像をお薦めとして現わすようにするのである。確かに便利になる。

しかし、これだけではない。グーグルは、スマートホンからGPSの位置情報を把握し、メールから現住所のみならず詳細な通信内容、さらにストリートビューから居住環境、交流サイトで登録した年齢情報や学歴、交友状況をも把握しているのである。これらの情報が個人別に統合されると、グーグル利用者は丸裸になったのも同然である。

グーグルは、これらの情報を他企業には提供しないと明言しているものの、自分では勝手に使用するのだ。広告主がグーグルに頼めば、グーグルは得られた利用者の年齢、趣味、交友関係、過去の購買履歴、住所などの個人情報を駆使して最も有効な者を選び出し、ターゲットを絞った広告を出す。このネット広告が現在、グーグルの最大の収入源となっているという。グーグルは他にも個人情報を活用したビジネスを考えているに違いない。グーグルが無料で各種のサービスを提供してきた理由はここにある。

 

プライバシー保護意識の低い日本
 

グーグルの方針変換の発表を受けていち早く反応したのは、欧州であった。EUやフランス政府は、「プライバシー保護の法制に反する」と実施の延期を再三求めた。米国でも「集めた情報がハッカーに狙われる」と危惧の声を上げた。日本政府は無反応であったが、実施直前になって、「現時点では、個人情報保護法違反ではないが、違反を起こさないように」とグーグルに注意を促した。

障子とふすまの部屋に住んで、周囲との和を尊ぶ日本では、プライバシー尊重の気風も少なく、個人情報保護の考え方も歴史が浅い。一方、個室が発達し、常に他人と闘争的なヨーロッパ社会では、自己防衛に敏感で、個人情報の取り扱いにも用心深い。

そもそもコンピュータで取り扱う個人情報に対してプライバシー保護の必要性を訴えたのは、1970年代初頭、OECDでの議論であった。行政機関や企業のコンピュータで処理される個人データが、漏洩されたり目的外使用されると個人の利益が著しく侵害されると危惧したヨーロッパ諸国は、統一的なガイドラインを作成した。各国は、その原則に則り次々とデータ・プライバシー保護法を制定した。

日本はこの動きに十数年遅れの1988年、やっと「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律」が制定された。そして2003年、現在の「個人情報の保護法」が成立したのである。

 

フェースブックも「ビッグ・ブラザー」予備軍
 

グーグルが個人情報の取り扱い方法を変更した真の理由は、フェースブックの発展に対抗するためだと言われている。フェースブックは、メールやホームページ、掲示板、検索などが統合された会員制の限定サービスであり、フェースブックが把握した個人情報は、当初よりネット広告に活用されてきた。

今回グーグルが行ったことは、フェースブックでは以前より当然のこととして行われていた。なぜグーグルでは問題になったのか。 ネット検索をほぼ独占的に提供するグーグルは、検索結果をどのように表示するか意のままであり、事実上ネット上の全情報が、グーグルによって如何様にも価値付けされるのである。そのグーグルが、個人情報をも集中的に管理すると、絶大な力を持つことは容易に想像できる。

一方、形の上では、会員を前提とした閉じられたサービスであるフェースブックも、既に数億人が使用しているという。多くの人に使用されネット利用の一般的な共通プラット・フォームになれば、グーグルとまったく同じことになる。

 

求められる防止策
 

個人が個人情報を悪用されないよう自己防衛するには、メールは複数のプロバイダーの複数のアカウントを使う、交流サイトやクラウド・サービスは利用しない、ファイルは自分のハードディスクにのみ保存するなど、サービスやデータ保存を分散することである。しかし、利便性を大幅に犠牲にしなければならず、実行できる人はいないだろう。強力な競争政策や規制など、あらゆる手段で「ビッグ・ブラザー」の出現を阻止しなければ、とんでもない世の中になる。

サービスを開始して10年でネットを制覇したグーグル、今、それを追従するフェースブック。成功すればベンチャーが数年間で世界の情報を支配するのがネット社会である。法制度や体制は、その爆発的な発展にまったく追いつけていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

国際人養成実践講座   

 ビジネスマンや役人が国際会議に出席したり、外国人と交渉するにあたって役立つノウハウを、順次まとめてまいります。                

 

 

 

 

 

                   

                      

「国連」という錯覚  日本経済新聞出版社

 <書評>

 

 

 

 

 

inserted by FC2 system